もう一つのMacintosh”Canon Cat”
「マッキントッシュ伝説」本のジェフ・ラスキンとのインタビューの中で、Macintoshの当初のアイデアは、最終的に出来上がった初代Macとは似ても似つかないものだったことが語られています。そのジェフのオリジナルMacintoshのアイデアが、その後Canonとの共同開発で具現化していたのです。それが"Canon Cat"です。
関心空間のCanon Catの項目には、「Macintoshに遅れること数年、1987年か88年頃、キヤノンUSAからひっそりと発売され、僅か2万台余りが生産さ
れた後ひっそりと消えて行った。」と記されています。
仕様:
Size Dimensions 10.7 by 13.3 by 17.8 inches
Weight 17 pounds
Components Processor Motorola 68000 running at 5 MHz
Memory 256K bytes
Mass Storage One 256K byte internal 3.5-inch floppy drive
Display 9-inch black-and-white built-in, bit mapped
Keyboard Compatible with IBM Selectric typewriter plus
control functions on front face of the keys
I/O Interface One Centronics parallel port, one RS-232C serial
port (DB-25 connector), two RJ-11 jacks (for
telephone connections)
Modem internal 300/1200 bps, Hayes compatible
ROM 256K bytes
Price $1495
"Canon Cat"は、何種類かあるようですが、私の手元にあるものがオリジナルではないかと思います。
Jefは、「当初のMacの設計では、アプリケーションや画面インターフェースをROMに格納していたが、それは新しいアイデアだった」と述べていますが、それを裏付けるように、"Canon Cat"の電源を入れるとROM内蔵のワープロの画面がすぐに立ち上がります。非常に単純なSystemです。最初は「単なるワープ
ロか」とちょっとがっかりしましたが、よく見てみると、このワープロ画面が統合ソフトとなっていることがわかります。しかし、それは、AppleWorksのようにワープロ、表計算、データーベースなどのそれぞれの画面を切り替えて使うのではなく、ワープロ画面の中のどこであっても「計算式を入力すると計算が出来たり」、「住所録
を入力するとそれをソートしたり検索出来たり」するというもので、最初はすこしとまどうかもしれませんが、慣れるとキーボードだけで操作できるので快適です。通信機能も含まれています。また、そのワープロ画面は何枚も立ち上げて画面切り替え出来ます。どちらかというとCatはコンピュータというよりは図体の大きなPDAのようなものと言えるかもしれません。
確かに複雑なことは出来ませんが、1つのワープロ画面しかないわけですから、単純でだれにでもすぐに使えます。また、私たちが1枚の紙の上で計算したり、住所録を書いたりする作業とまったく同じ感覚で使えるわけです。
これがジェフ・ラスキンの目指したMacintoshのユーザーインターフェースだったのでしょう。マウスやGUIは使われていません。Jobsの目指したデスク
トップメタファーのような派手さはありませんが、実用性という観点からはおもしろいアプローチではないでしょうか。"Canon Cat"もいくつかのタイプが開発されたようですが、結局話題にもならずあまり売れなかったので、現在、ほとんど資料が残されていません。どんな形でどんな寸法でどんなバージョンがあったのか。その機能はどんなものなのか。Macintoshには膨大な資料があるのとは対照的です。ひょっとするとこの"Canon Cat"がMacintoshになっていたかもしれないのに、この差は何なんでしょう。歴史とは残酷なものですね。
幸い、私の手元にその"Canon Cat"があるので、初代Macintoshと比べてみたいと思います。
まずは、形状と寸法です。

初代Macと比べてみると、共通点が多く見つかります。筐体の大きさもほぼ同じ、画面は同じ9"モノクロ、キーボードの大きさも同じくらいです。後部はさらに似ていて、移動用の取手、通気口の配置、電源スイッチとACコードの位置など。
画面はMacと同じペーパーホワイト地に黒のフォントです。キーボードはのちのPowerBookのように前部に広い空間を配置しています
後部のコネクターは左からパラレル、シリアル、モデム、LocalTalkでSCSIポートは見あたりません。この辺りも初代Macに似ています。
これらの共通点がジェフ・ラスキンのオリジナルのアイデアなのかどうかはさだかではありませんが、あえてこのように初代Macとの共通点を残したのはラスキンのジョブズに対する意地かもしれませんね。
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